経済学大学院留学ガイド -志望校選び-

赤字は2009年9月追記箇所

  1. 判断基準

    ランキングと自分が師事したい先生がどこにいるかの二点で選ぶべき。もちろん治安や気候なども判断基準としてありうるが、「経済学大学院留学ガイド」として扱う必要はないと思うので省略。一つだけ書いておくと、冬の寒さが厳しい東海岸の大学院生の方が、年中暖かい西海岸の大学院生よりも経済学博士号を取るまでの年数が短い、という話がある(a PhD holder at Stanford)。

  2. ランキングが重要な理由

    ランキングが重要である理由は二つ。一つは、上位の大学で博士号を取る方がその後の就職(特にアメリカの大学教授になる場合)に有利であること。(何故かというと、各大学経済学部の採用担当者は優秀な博士号取得見込者をスクリーニングする方法として、上位校(アメリカのトップ20とプラスα)のトップ学生に的を絞るから。従って、幾ら良い研究をしても下位校にいると採用担当者に気づいてもらうのが非常に難しい。)もう一つは、アメリカの大学は教員の移動が激しいので、常に各分野で一定水準以上の教授を揃えている上位校に入っておいた方が指導教官選びに困らずに済むこと(KS)。

  3. ランキング

    ランキングには、経済学者へのアンケート調査に基づくもの(survey-based)と、所属教員の経済学トップジャーナル掲載論文ページ数に基づくもの(publication-based)がある。

    1. Survey-based Rankings

      survey-based のランキングでおそらく最も有名なのが U.S. News and World Report というアメリカの雑誌によるもの。算出方法その他についてはこちら。アンケートの回収率が38%という点で正確さに欠けるが、だいたいの目安にはなる。1999年頃からこのランキングを見続けているのだが、トップ5は常に、MIT, Harvard, Princeton, Stanford, Chicagoで占められていて、6-9位も不動。10-20位も順位の入れ替わりはあるが、顔ぶれはほぼ同じである。2002年3月まではホームページ上で順位を見る事ができたのだが、購読しないと見る事ができなくなってしまった。以下に、2000年秋の調査に基づくランキングを、各大学経済学部へのリンク付きで、31位まで載せておく。31位という中途半端なところまでにしたのは、トップスクールに出願している人が滑り止めに出願していた大学が31位以内だったから(PR)。2004年秋の調査に基づいたランキングは、堂々の第10位に食い込んだ UC San Diego の経済学部ホームページで25位まで見ることができます(こちら)。US News のオフィシャルページはこちら。分野別のランキングも以前より充実しています。

      1. MIT

      2. Harvard, Princeton, Stanford, Chicago

      6. UC Berkeley

      7. Yale

      8. Northwestern

      9. Pennsylvania

      10.Wisconsin

      11.UCLA, Michigan, Minnesota

      14.Caltech, Columbia, Rochester

      17.Cornell, UC San Diego

      19.Carnegie Mellon, NYU

      21.Brown, Duke, Texas-Austin

      24.Johns Hopkins, Maryland

      26.BU, Illinois, Virginia

      29.Ohio State

      30.North Carolina

      31.Michigan State, Pennsylvania State, UC Davis, Iowa, University of Washington, Washington University in St. Louis

      その他の survey-based ランキングとしては、National Research Council (NRC) によるものが有名。US NEWS のランキングより信頼性が高いそうだが、最新版で1993年のものなので、情報としては古い。ランキングは、Maryland 経済学部ホームページ内のこのページで見る事ができる。(全学問分野のランキングはこちらでエクセルファイルで見ることができる。)10年ごとに調査を行っているらしいので、次回は2003年のようだ。

      あと、Gourman Report という本にもランキングがあるらしい。

    2. Publication-based Rankings

      Publication-based の最新ランキングは、以下の論文に載っている(PDFファイルへのリンク)。

      Kalaitzidakis et al.(2001) "Rankings of Academic Journals and Institutions in Economics," forthcoming in European Economic Review

      経済学専門雑誌のランキングをまず算出してから、上位30誌への論文掲載ページ数を元に世界中の経済学部をランキングしている。1995-99年が調査対象期間。なお、日本の大学では105位の大阪大学が最高。

      この Kalaitzidakis et al. (2001) の方法論に則って、1993-2003年の最新ランキングを算出しているのが econphd.net のランキング。専攻分野別のランキングが充実しているのが特徴。ウェブサイト管理人の Christian Roessler は現在オーストラリアのメルボルーン大の経済学博士課程生(Rochesterの経済学博士をドロップアウトしている)。ウェブサイト立ち上げ当初のランキングは非常にお粗末だったのだが、改良に改良が重ねられたようで、今や、幾つかの大学の経済学部ホームページ(University of British Columbia, University of Toulouse I)からリンクされるほどになっている。

      1990-94年のアメリカの経済学部のみを対象としたランキングは、

      Dusansky and Vernon (1998), "Rankings of U.S. Economics Departments", Journal of Economic Perspectives, 12(1):157-170

      という論文に載っている。ランキングだけなら、このページで見る事ができる。

      なお、参考までに、ヨーロッパの経済学部のみを対象としたランキングは、以下の論文に載っていて、

      Kalaitzidakis et al. (1999), "European economics: An analysis based on publications in the core journals", European Economic Review, 43:1150-1168

      アジアの経済学部のみを対象としたランキングは、

      Jin and Yau (1999), "Research Productivity of the Economics Profession in East Asia", Economic Inquiry, 37(4):706-720

      に載っている(ランキングだけなら、阪大の西條辰義教授によるこのPDFファイルで見る事ができる)。

    3. その他のランキング

      Marshall Medoff (1996), "A Citation-Based Analysis of Economists and Economics Programs'' The American Economist, 40:46-59 

      1971-92年の間に一流経済学者を何人生んだかで測ったランキング。

      Recent ranking of Economics Departments by University of Toront

      University of Toront による、アメリカとカナダとヨーロッパとイスラエルの経済学大学院ランキング比較。

  4. 師事したい先生の居場所探し

    自分の研究関心に沿って色々論文を読んでいくと、何度も目にする教授の名前があるはず。その教授が今どの大学にいるかは、Google でその教授の名前を検索すればほぼ一発でわかる(アメリカは教員の移動が激しいので、論文に載っている所属先は昔のものである可能性が高い)。

    また、各大学経済学部のホームページの教員リストから、各教授の研究関心がわかるし、CV(履歴書)もほとんどの場合見ることができるので、論文がどの経済学専門雑誌に載ったかを見れば、その教授がどれぐらい優秀かもわかる(雑誌のランキングについては、上記の Kalaitzidakis et al.(2001) を参照)。

    自分の関心分野で誰が有名なのかを知る方法としては、(1) その分野の経済学専門雑誌の Board of Editors 一覧を見る、(2) Elsevier が出版している Handbook in Economics シリーズ(各分野ごとに、その分野で一流の研究者が各章を分担して執筆している)の執筆者が誰なのかを調べる、(3)各大学経済学部ホームページ(上記のリンクを参照)で大学院の専門科目の授業シラバスの reading list を入手して、よく出てくる名前を探す、などが考えられる。

  5. もちろん、「この先生に師事したいからこの大学にする!」というのは教員の移動の激しいアメリカの大学ではリスクが高いので、そういう先生が二人以上いるところを探し出すのが良いだろう。

    幾つかの専門分野に関しては、掲示板でどの大学にその分野に強い教授がいるかが情報提供されています。

    環境経済学: no.709, 712, 713,

    テロ・戦争の経済分析 no.693, 696, 697, 698, 699

  6. 一年目のコースワークの厳しさ

    一年目のコースワークとは、ミクロ経済学・マクロ経済学・計量経済学の必修三科目のことで、これを履修して学年末の試験に合格しないと二年生になれない。これがどれぐらい厳しいかも志望校選びの判断基準となりうる。しかし、個人的な印象では、コースワークが厳しくない大学は、その分、入学の段階で数を絞り込んでいるから合格が難しく、コースワークが厳しい大学は、その分、多くの学生を入学させているようなので、どっちもどっちだと思う。

  7. 出願校の数

    少なすぎると全滅の危険があるし、多すぎると手間もかかるし出願料も馬鹿にならない(一校当たりだいたい60ドルぐらい)。10校ぐらいがベスト(PR)。また、大学のランクがばらつくように選ぶ必要もある(PR)。欲張って上位校ばかり出願すると当然全滅の危険がある。トップ20の大学に出願が集中する傾向にあるので、滑り止めにトップ20以下の大学にも出願しておくと、全滅を免れることができるだろう。他方、合格か不合格かは運の要素も強いので、トップランクの大学に全く出願しないのももったいない。推薦状を書いてもらう教授に遠慮して出願校を少なくするのは無意味。推薦状を書くのも教授の仕事のうちである(PR)。下位校も含めてたくさん(20校とか)出願して、下位校に奨学金付きで合格することで、奨学金無しで合格通知を送ってきた上位校から奨学金を引き出す交渉材料にする、という戦略もあるようです(The Road to Economist, 2005年10月14日)。

 

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